◆取材時、簡単なプロフィール確認で年齢の質問になった際、"私、ゴジラが誕生した同じ年に生まれたんです"と笑顔で応対してくれたのは、上天草市役所 松島庁舎で学芸員として勤務する高野さん。文化財担当の専門職として、市の指定文化財の指定に携わるなど幅広く活躍されており、学芸員としての仕事や上天草へ移住して感じたことなどを丁寧に語っていただきました。
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私は生まれも育ちも熊本市です。歴史好きな父の影響を受け、幼い頃から歴史に興味を持っていました。高校生の時、考古学が大好きという日本史の先生から発掘現場を紹介されたことがきっかけで、大学では考古学を専攻しました。そして卒業して今日に至るまで、長らく文化財の記録・保存をするための発掘調査の仕事に関わってきました。
上天草市には2年前の春、市の学芸員として採用されたのをきっかけに移住してきました。こちらでは歴史資料の収集・調査・保存、そして情報発信等の文化財全般の業務に関われるようになり、非常にやりがいを感じています。また、市の「出前講座」(※1)や県内からの講師依頼を受けたりしています。8月には芦北町の文化財保護審議委員の研修などを担当させていただく予定です。私は学芸員として文化財を正しく理解し、調査、管理、保護することで、それを上天草市の宝物として、未来へ引き継いでいきたいと思っています。
昨年12月には、大矢野町の大庄屋「吉田家」に伝わる古文書を市の文化財として指定させていただきました。(※2)合併後、市の文化財指定は初めてということで大変貴重な経験となりました。これをきっかけに市民の皆さんが古文書に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
吉田家の「肥後私領運動」に関する文書
よく冗談半分で"私が扱っている時代は、恐竜がいた8,500万年前から現在まで"と説明していますが、それだけ気が遠くなるような長い時代を研究しています。実は、上天草市には初期(5世紀前半)の貴重な装飾古墳(※3)があります。現在は保存・活用のためにモニタリング調査をしており、一般には公開されていませんが、来年には「熊本県内装飾古墳一斉公開」にも参加させていただく予定です。
また「熊本県立 装飾古墳館」が主催するバスツアー(※4)では、2日間に渡り上天草市の装飾古墳も見学コースに組まれる予定です。どちらも通常ではなかなかお目にかかれない古墳が見学できる貴重な機会となり、県内外から多くのファンが集まるのを今から楽しみにしています。こういった仕事に関われるのも上天草市の学芸員であることの醍醐味ですね。
写真は長砂連古墳
上天草市は観光地というイメージしかありませんでした。実際に住んでみると、空気がきれいで一年を通して過ごしやすい気候です。そして野菜はもちろん、大好きな魚が本当に美味しい!もともとアウトドア派で、ボーイスカウト(※5)ではリーダーをしているので、海も山もある自然豊かな場所で生活できることが幸せです。今ではずっと住み続けたいと思える場所になりました。
上天草市は、古(いにしえ)から、海運や豊かな海産物で栄え、それは海と生活してきた天草地方では今も昔も変わらず大事にしているところ。そこが私の住む上天草の誇れるところです。
◆高野さんに趣味を尋ねると、「パソコン、車、カメラの3つです。」と即答。なんと、カメラは熊日写真展での入賞経験もあるほどの腕前。写真は3号橋と4号橋の中間地点から撮影された松島の夕陽です。
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※1 「出前講座」
市職員が市の取組みや暮らしに役立つ情報など制度内容を分かりやすく説明する講座。
【平成25年度の「出前講座」一覧】H25年度「出前講座」.pdf
※2 大庄屋「吉田家」古文書
平成24年12月に市の文化財に指定された大矢野町の吉田家に伝わる古文書198点。平成16年の4町合併後、初となる市の文化財指定となり、熊日新聞にも掲載されました。
(写真は掲載紙面)
※3 装飾古墳
死者を葬る石棺や石棺の周りの施設にも彩色や彫刻で絵画が描かれた古墳のこと。上天草市には長砂連装飾古墳、広浦装飾古墳、大戸鼻装飾古墳の装飾古墳があります。(広浦装飾古墳は「熊本県立美術館」に展示されています)
※4 「熊本県立 装飾古墳館」の熊本県内装飾古墳見学モニターバスツアー
県主催で行われる装飾古墳を巡る日帰りのモニターバスツアーです。
・平成25年11月23日(土)熊本駅 発→上天草方面
・平成25年11月24日(日)熊本駅 発→上天草方面
・平成25年12月 1日(日)上天草市発→古墳館・山鹿方面
【参考サイト】熊本県立 装飾古墳館ホームページ
※5 ボーイスカウト
世界161の国と地域、約3,000万人が加盟する世界最大の青少年運動です。
【参考サイト】ボーイスカウト日本連盟ホームページ