「私はもともと大矢野町の出身。長い間、両親を故郷に残して大矢野を離れていましたが"人生の仕上げは故郷への恩返し"だと思っていました。」

　そう語るのは、昨年3月に熊本市内から移住し、大矢野町で塾を経営されている川越さん（54歳）。中学卒業後は上天草市を出て、福岡県の高校に入学。その後、愛知県の大学に進学し、そこで2歳年下の奥様と出会い、ご結婚。大学時代から塾講師のアルバイトをし、卒業後はご自身で塾を経営。愛知県で20年、熊本市内で11年と、30年以上もの間に、多くの生徒さんを送り出し、移住後の現在も大矢野町で小学生高学年～中学生を対象にした塾を経営されています。（※1）

◆どんなきっかけで移住を決められたのでしょうか？

（ご主人）「3人いる子供達は成人し、自分達の道を歩き始めました。それをきっかけに上天草市に戻るなら今じゃないかと考え始めました。昨年末から少しずつ移住の準備をし、塾を開くのに手頃な物件がちょうど見つかったので、３月に私だけ先に大矢野町に移住しました。」

（奥様）「主人は当初、子供達のこともあったので、私を残して一人で移住しようと思っていたんですよ（笑）。でも次女が結婚し、長女も就職が決まって長男と一緒に暮らすことになったことで子供達の手が離れたので、主人が移住した2ヶ月後の5月に私も移住してきました。」

◆移住後、川越さんは塾を開業し、奥様はお弁当屋さんで働きながら、先日生まれたばかりのお孫さんの面倒をみたり、それぞれの趣味を楽しんでいるそうですね。

（ご主人）「釣りが大好きで、熊本市内に住んでいる頃は、上天草市の龍ヶ岳町まで片道２時間かけて通っていましたが、今は１時間弱で行けるようになりました。天気予報とにらめっこをしながら、週に一度は釣りに行っています。龍ヶ岳町にはお気に入りの"釣り筏（いかだ）"（※2）があるんです。」

（奥様）「こちらに移住する前は、主人が一人で長時間の運転をしていたので、内心とても心配でした（苦笑）。移住して、気軽に行ける距離になって本当に良かったです。」

（ご主人）「釣りをしている時はとても静かな時間が流れ、景色を眺めているだけで心が和みます。往復で通る4号橋からの眺めも素晴らしいですね。行きは朝焼けを見ながらどんな魚が釣れるだろうかとワクワクし、帰りは夕焼けを浴びながら、その日の釣果を振り返っています。」

（奥様）「主人が釣ってきた魚が食卓に並ぶ日も増え、魚も上手にさばけるようになりました。上天草にはおすそ分けの文化が残っていて、お野菜やお魚をおすそ分けし合っています。この辺りは以前商店街だったこともあり、商人気質というか人あたりの良い方ばかりで、近所付き合いを良くしてもらっています。」

◆こちらに来て驚いたことや方言で困ったりしたことはありますか？

（ご主人）「（熊本市内での出来事ですが）塾の生徒さんに、間違っているところを修正する意味で「直して」と言ったら、教材を机の中にしまい込んだんです。こちらでは『直す』＝『片づける』だったんだなとすぐに気付きました（笑）。やはり長い間使っていないと忘れているみたいで、ご近所の方とお話するときも、思い出しながら方言と向き合っています。」

（奥様）「日々の生活で驚いたことは、スーパーで売られている真っ白い刺身用のイカしか見たことがなかったので、甲イカを見た時はその特徴的な模様に驚きました（笑）。方言は熊本市内と似ているのでそれほど困ることはありませんが、独特の方言もあるので日々楽しみながら覚えています。」

◆奥様は、移住されてから始められたことなどありますか？

（奥様）「去年の秋頃から知人から教わりペーパークラフトを始めました。材料は熊本市内でも買えますが、ちょっと変わった色の材料などはカタログ通販で買っています。最近少し忙しくなって、作るペースは少し落ちましたが、ちょっとしたプレゼントにも喜んでもらえるので作っていて楽しいです。」

 「主人が近所の飲食店で知り合いになった方から『移住者女子会』（※3）のことを教えてもらい、私も前回初めて参加しました。いろいろなことにチャレンジされている方が多くて、私も刺激を受けました。」

近所の子供が虫カゴに入ったクワガタを見せに来たり、ご近所に住むご夫婦との会話を聞いていると、すっかり地域に溶け込んでいるご様子のお二人でした。

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※1 川越さんが経営されている『川越学習塾』
小学生高学年～中学生を対象とした学習塾。近所（登立）の子供はもちろん、岩谷・維和・柳などからも生徒が通っています。
電話：0964-56-3338

※2 『筏づりの山本（紀勝丸）』
ご主人お勧めの"釣り筏（いかだ）スポット"。営業時間は夜明けから日没まで。トイレ付き。大人2,000円、子供1,000円。龍ヶ岳町赤崎港から出船。
電話：0969-63-0512　携帯：090-7981-1721

※3 移住者女子会
市が提供する移住者の女性を対象とした交流会。移住者の女性であれば、どなたでも参加できます。
＜問い合わせ先＞企画政策課　政策推進係：TEL0964-26-5539